ぱた、ぱたと手の上に何かが落ちてくる。
水だろうか、けれど何だか妙に熱い。
一滴、二滴、ぱたぱたと、きつく握られた手の甲を濡らしては、重ねた指の隙間から零れ落ちていく。
薄く開いた目を凝らし、手元を見る。
赤く染まりゆく視界の中で、手を取り此方を見る姿が映った。
――そうして雨の正体を知る。
僅かに動かせる指先で、その目元を拭おうとするも、ぎこちなく触れるのみで。
指先一本、拭う事すら叶わぬ身体が――ああ、なんだかもどかしい。
遠くに聴こえる嗚咽の声に、
――いつだったろう、雨の降る日に戯れに交わした言葉を、なんとはなしに思い返した。
「似合わない…」
ぽつり、と呟く。何だか弱弱しい声が出たものだ。まだ色々と伝えたい事はあるけれど、どうしてだろう、身体が重くて口を開くのも気だるい。
今は目を閉じて、眠りにつこう。
起きた時に、いつものように厭味の一つでも言ってやれば良い。
銃を持った相手の前に、軽はずみに出るなとか――ああ、それから、――…………
君の雨がやむ日がきますように。
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